<6話 SAME>
 そして、夜は更け、次の日になった。彬は、複雑な気分で、集合場所に来た。 それには、いくつか訳があった。
 今から、1週間前のホームルームの話だ。

「ぉーぃ。『年旅行』の班分けするぞー。」
 先生のその言葉と共に、教室内がざわつく。もちろん、喜びと緊張だ。だが、彬は一人違う反応をしていた。
「先生!」
 彬のその言葉と共に、クラス中の声が少し、静まる。
「"修学旅行"じゃないんですか?」
 教室内はまた、ざわついた。「ぇっ?そうなの?」とか「違う、違う。」とか色々な声が聞こえる。
先生は、ため息をつきながら答えた。
「お前なぁ、さっき、"年旅行"っていったろ?だから、毎年あって、3年は年旅行なんだ。」
 彬は小声で"すいませんでしたー"と言い、座った。そして、自分を勘違いをさせた矢島を見た。矢島は、後ろで謝る仕草をしていた。
「お前ら。この時間中に決まらなかったら、先生が勝手に決めるぞ!」
 その言葉に、クラス中は、突然静かになった。つまり、脅しだ。
「んじゃあ班は四人×9班だ。これで36人だ。いいな。んじゃあ決めろ。ちなみに、男子と女子二人ずつな。」
 小学生のようにえーという声が聞こえる。
 彬は班の内、自分を除く2人は決定していた。言うまでもないが、隆と矢島である。問題はあと一人だった……。
 そこに、とんでもない奴が来てしまった。
「あのージャンケンで負けちゃって一人になっちゃったんだけど…入れてもらっていいかな?」
――――え!?まさか…夏実!?
最悪な状況の考えが頭をよぎった。
「いいよ〜全然オッケイ。俺的にはめちゃくちゃ良いメンバーかも。」
隆のテンションは何故か上がっていた。
 最悪の状況が起きてしまった……思わず、彬は口をポッカリと開けてしまった。多分、彼女(夏実)の事であるから、邪魔をする事はないだろう。しかし、実質的に邪魔をされなくても、あるい程度は被害を受けてしまう。やはり、彬の性格上夏実の前で矢島となれなれしくする事なんてあんまりできないのである。

 しかし、そんな複雑な状況の上にさらに複雑な状況が入り混じった。
 隆が、彬を呼んだ。と言う事は親友と言う間柄でしか話せない事なのであろう。
「なぁ、彬。お前中川と付き合ってなかった?」
 はぁ、と肩を落としてタカは言う。彬はギグっとした。

――――そして、二十分休みの最初に呼び出したはずだが、だったはずなのに、もう5分前のチャイムが鳴った。
その間、隆は説得したが、彬は口を開く事がなかった。いや、出来なかったのだ。
「もう五分前のチャイムだな……帰るか――」
 その時――隆は彬のむなぐらを掴んだ。そして、強気にこう言った。 「いいよ……言ってやるよ。俺は――」
 一瞬隆の口が止まった。そして、隆は続ける。
「――――俺は……俺は……中川が好きだぁ」
 その時隆は胸倉を離した。そして、興奮を止めるように隆は言う。

「だからな……気になるんだよ。どうなってるか。」
 彬は隆の思いの強さを感じた。自分は付き合っているわけではないのだし、勿論答える事にした。
「……俺は付き合ってない。いや、正確には別れた、だがな。俺が恋のキューピットにでもなってやろうか。」
 最後の所で彬は少し笑う。しかし、裏はすごく複雑だ。
 そう…今までみたいに、「フラれたら帰れる」そんな甘い考えは通用しない。もう、逃げることはできない。それを強く感じた。
 もう一つ感心したのは隆の思いの強さだ。最悪、あんな風に本人じゃなくてもいいから、人に好きと言えるようなくらいの強さは必要だ。

 しかし、この旅行が矢島を違う方向へ導くのだとは誰も思いもしなかった…