四話「true story[流れ星]」
 そう、無視をされてしまった…

 そして、時は残酷に流れて行った…
 その日から1ヶ月…崩れた崖の調査が始まった。矢島は自分の父がどうなったかなど、知る余地もない。

 遂に、復旧作業は、終了した。矢島の父親の跡など何も残ってはいなかった。本当に一瞬だった。そう、風の如く消えて行った―
「…ってね。でも、もっと許されないことがあるの。」
残された言葉も足音も無い。だが死んだ証拠もないのだ。

だが、怒りがこみ上げてくる出来事は、まだあった。

 それから何日か経って、父の葬式が始まった。だが、父は死んだとは限らない。
生きているという希望も無いが、死んでしまったという証拠もない。だから、"勝利"という希望に託していた。
でも、夫を最も愛しているはずの、妻までも、泣いていた。
「…お母さん…なんで泣いてるの?」
彼女は分かっていたけれど、信じることができなかった。
「何でかって…葬式じゃない。」
彼女は大きなショックを受けた。分かっていたけれどショックだった。母もあきらめてしまったのだ。母ならば、"まだ生きている"という希望が残っていると思っていたのだが…

「…私は、だからだれも信じる事なんて、出来ない。例え、どんな時でも、どんな人でも、いつかは信じられない時が来る。そう思っているの。だって、そう思ったほうが裏切られた時楽じゃない。」
反論することなどできない。彼女の意見に納得をしたと同時に悲しすぎる現実に打ちのめされた。

 彬はとにかくここを立ち去ることにした。
「ごめん…俺、帰る。話聞かせてくれてありがとう。」
「うん。じゃあね。」
矢島が絶望に打ちのめされているのは言葉でも察知できた。

 その夜、彬はさまざまな思いを抱えて夜空を眺めていた。
 まず、人は同じ時間を共有している。1日は24時間、決まっている。彼女が苦しんだ時、自分は何をしていただろうか。ヘラヘラしていただろうか。たとえ、ヘラヘラしていても、結局"時間は共有している"のだ。どれだけ真面目に生きようと、ふざけて生きようと、時間は共有されている。
 今、色々な国で争いが起きているだろう。自分たちがこう、夜空を眺めている時にも、人は死んでいる…これこそが"不平等"じゃないだろうか。いつか、色んな人が平等に過ごせる様になって欲しいと強く思った。 日本が平等を主張する国でも、すごす時間の密度なんで平等にできる訳がない。全ては、その日、その状況なのだ。
 矢島は今、思い出して泣いているかもしれない。彼女はなにも信じられないと言った。彬はそんなやつはマンガくらいだと思っていた。しかし、実際にいた。しかも、愛する人だ。つまり、自分も信じられない。苦しい話だった。"何をすべきなのか"そんなことはわからない。
彬はなにもできない自分に苛立ち、あせり、怒り、恨みの感情がこみ上げるばかりだった。  明日からは、修学旅行。2人は共にさまざまな思いを抱え、旅立つのだった。