4話「true storyA」
彼女は突然走りだした。
「先…帰るわ。んじゃあ。」
----------------「わ」?
関西弁のイントネーションだった。

翌日、隆に聞いてみる事にした。
「なぁ、矢島ちょっと変じゃないか?」
「ああ、昨日地震あったからなぁ…」
「地震?」
確かに、地震のニュースの後に彼女はおかしくなった。
「仕方がないなぁ…。誰にも言うなよ。」
どうやら話によると、隆は、矢島と小学校3年生まで一緒だったらしい。


 彼女が小学校1年生の時、つまり、1995年だ。この時彼女の今後トラウマとなる、事件が起こった。
 そう、それは深夜に起こった。突然地面がゆれた。その時住んでいた家は、マンションの7階の奥で、山沿いにあったらしい。これだけなら、まだ…というあたりなのだが、彼女の父親がこの地震で亡くなったという。

 彼女の父親はかなりボケている所があって、マンションに出た瞬間、地盤の弱そうな崖の方へ走っていてしまった。走って崖を抜けるか抜けないかの時、地震が起き、一気に崖が崩れてしまった。その後、安否は不明。彼女にはそのことがどうもひっかかるらしい。

 その事実を初めて知った時、彬はひどい衝撃を受けた。矢島は、決して強い女性ではなかった。過去から逃避し、"強がっている"だけなのだ。おして、それがトラウマである訳もよくわかる気がした。もし、これ以上、彼女を愛するのならば、彼女を支えなきゃいけない。そう、それを決心しなければいけないのだ。

 帰り道、何をしようとしていなく、何も考えずに、矢島に声をかけてしまった。
「矢島。」
「あ、中村君。一緒に帰ろうか。」
矢島はいつもの笑顔で言った。 「うん。そうだな。」
「あのさぁ…お前が、昨日あの地震のニュースで驚いている理由がわかったよ。」
矢島の表情が突然変貌した。 「…ぇ?どういう事?」
彼女に"隆"に聞いたと言う事と同時に聞いた事を全て話した。
「でも…ね。その話にはもっと許せない事があるの。」
彼女は話し始めた。
そのあとだ。矢島の母は夫が埋まった事で、貧乏ゆすりをして、その後遂には非難場所まで逃げて行ってしまった。そして、矢島は一人になった。状況を全て理解した途端、大声をあげて泣き始めた。そのあと、学校へ走っていった。

 次の日、また、そこに戻ってきた。気になったのは一つの事。"父はいきているのか、死んでいるのか"。やがて、自衛隊員らしき人が来た。その時、矢島は急いで追いかけた。遂に追いついた。そして精神も追い詰められている中、ようやく、言葉を交わす事が出来た。
「あの…」
その言葉を発した途端、その人は、慌てた。
「まだ、こんな所に子供が…危険だ。お母さんか、お父さんは何処にいるの?」
「お母さんは、学校にいるよ。で…」
「学校か…近いな…。」
そして、その男の人は矢島をおぶって走りだした。

結局、話すら聞いて貰えなかったのだ。そして、何もわからないまま、時は過ぎ、復旧は完了した…。