1話「いつもそばにいるから…」
「好きな人ができたみたいだね。」
「何で分かったんだ?」
「君のことを1番分かってると自分では信じているから…」
彼女は鋭い。
少し時が流れた。
「別れだね。でもっ…」
『元カノ』が何かを喋りはじめた。
「いつもそばにいるから…君を1番愛しているかどうかは分からないけど…1番好きだから!」
こう言いきった。『いつもそばにいるから…』という言葉がやけにひっかかった。
 だが、俺はもう何だか別れたあとの彼女が可愛そうな目に合ってしまうだろうけど、俺にはどうすることもできない。何故なら俺は彼女に対して始めて自分の意思を優先したからだ。そんな始めての事にどう対処しようか分かるわけがない。
「ん…じゃぁ、夏実。」
「さよな…ら、彬君。」
 そう、彼女の名前は、中川 夏実(なかがわ なつみ)だった。もう、そんな事は全て忘れてしまったはずだった…

 そういえば、自分の名前は中村 彬(なかむら あきら)だ。そんな事も忘れてしまったかのように、時は過ぎ、高校への道へと進んだ…

   そして、時は経て、4月8日、入学式。俺は少し、引き気味にクラスの中の名前を探した。なぜなら、また例のあの娘がいるかもしれないからだ。
 案の定、俺は見たくないものを見てしまった。彼女の名前を発見した。こちんと、明朝体で『中川 』と書いてある。しかも、自分の前の出席番号。
 彼女の言っていた『いつもそばにいるから…』っていう言葉を思い出した。でも、今、心に余裕があるから言える。『そばにいるだけじゃなんにもならない』と。
 そして、矢島もいた。矢島も同じクラス。何だか明朝体じゃないような美しい文字に見えてしまう。
 だるい入学式も終わり、帰宅の所。矢島を誘うことにした。
「矢島〜帰ろう!」
「あれ?中川さんは?」
やっぱり、矢島は気遣いができる女性だ。
「まぁいいんじゃないの?」
「いってあげたら?付き合ってるんでしょ?」
「いや、あれはデマデマ。隆が勝手に言ってただけ。」
 そういう事にしておいた。隆にあとで謝っておかなきゃ。
「へぇ…そうなんだ…」
何だか納得してないような感じで、矢島は言った。やはり彼女も鋭い。
「ところで…何でこの学校にしたの?」
聞かれたくない質問をされてしまった。普通っぽく答える事にした。
「まぁ…8月に以上に成績が上がってこの学校を挑戦だ!っていうかんじだな。それと家が近いから。」
「へぇ…んじゃあ知らないかもしれないね。1年生の修学旅行がGWを挟んで10日くらいある事、とか騒ぎ好きな学校だとか…そういうの。」
全く知らなかった。何も考えずただ矢島の背中を追いかけていただけだったから。
「もしかして、全部知らなかった?面白いね、中村君んじゃあばいばい。」
予測不可能な学校に来てしまった事をちょっと後悔をした。だが、裏を返せば、これは『矢島にアピールするチャンスがある』という事なのだ。これから頑張らなくては。
1話完