<6話 SAD>
 バスの中ではそんな様々な思いに悩みつかれた彬は寝ていた。隣に矢島がいるのを忘れて。

 気づいたらもうついていた。よく見ると時計は午後3時を示している。
「おはよう。中村君。」
彼女はニコっと笑う。いつものように作り笑いで。
「ぁぁ、ってお前隣だっけ!?」
「うん、そうだけど……」
「マジかよー!!気づかなかった!!」
 彬は少し声が上ずった。
「もう着くよ。あそこ、あそこ。」
 矢島が指差したそこには宿があった。しかも、見栄えは高級ホテル。いや、今までに言った事のないくらい、高級な感じが漂う。

 着いたと同時にいきなり先生が「解散!」という言葉を発した。その言葉で豆粒達は、東西南北に散って行った。
 彬は、いきなり矢島と馴れ合うのは少々問題があるのじゃないか、と思い、隆の男友達と一緒に行動する事にした。その人達は皆結構温厚だった。しかも隆の友達には彬と同じバスケ部に所属している奴もいた。
 そして、気づいたら19時30分。昼を寝ていて食べてない彬は流石に腹が減っていた。なので、「俺飯食ってくる。」といって抜けた。
 しかし、その飯を食べると言うのにはきちんと意味があった。『矢島を探すため』だ。「たまたま会った」といえば納得するし、食べ物を食べに行ったという証人もいる。特に隆はお互いにバクダンを抱えあっているので都合が良い。
 でも、やはり探しにいくのは変だと思いコンビニで買った物を、街の中心の公園で一人で食べていた。すると、矢島を見つけた。矢島を大きな声で呼んだら後ろを向いて自分の所へやってきた。
 食べた後に軽く談笑しながら、戻っている時に財布を落とした。拾おうとした途端、他の同年代くらいの人が、拾った。返してくれるのかと思うと、財布をポケットの中に入れて、持って行こうとした。なので、ちょっと大きな声を出して言った。
「ぉぃ!それは俺のだ!」
 ニヤっとして盗った奴は言う。
「これは俺のや。俺のや言うてるのがわからへんのか!」
 ちょっとムッと来たので殴りかかった。
「ちょっとやめようや。中村君!」
 もう彬には矢島の声が聞こえていなかった。

 殴り合ってから5,6分経った。形勢的にはあちらの方が有利。
 その時!警察がやってきた。
「君達何をやっている!」
 警察は来てしまったのだ。事が終わらぬ内に。

 その後、警察の尋問のおかげで何とか彬は形勢を逆転した。それは財布のポイントカードに名前があったからだ。そのおかげで彬は解放された。帰りに、その盗んだ奴の担任の教師らしき人が悲しそうな目をしていたのが印象的だった。